Architecture・Interior design

STAND HOTEL Shimbashi

2026年3月、東京都港区東新橋にオープンしたアパートメントホテル「STAND HOTEL Shimbashi」。

近年、リモートワークの普及などを背景にオフィス需要のあり方は変化してきたが、現在は出社回帰の流れも見られ、都心部のオフィス市場は引き続き高い稼働率を維持している。そうした中で、不動産には単なる空室活用ではなく、立地や建物特性を踏まえた「有効使用」が求められている。

一方で、訪日旅行客の増加により、都市部の宿泊需要は拡大しているが、その内訳を見ると、需要と供給の間に差が見られる。国土交通省観光庁「旅行・観光消費動向調査 2023年)」によると、3名以上で旅行するグループ・ファミリーは全体の54.5%を占める一方で、3名以上が泊まれる部屋は36.1%を満たす室数しか供給されておらず、約18.4%の需給ギャップが生じている。

「STAND HOTEL Shimbashi」は、オフィス用途の建物をそのまま活用したコンバージョンホテル。

都心立地における建物のポテンシャルを活かしながら、インバウンド増加によるグループ・ファミリーの旅行需要に対する宿泊施設不足という都市課題に応えることで、不動産の新たな価値創出を目指した計画であった。

オフィス用途で建設された建物 (撮影:2025年4月)

建物は、地下1階/地上12階建。1階にロビー、2階から12階にかけては3つのパターンで構成された全11部屋の客室、地下1Fには宿泊者専用のジムエリアを配置した。

各フロア約40㎡台のコンパクトな床面積の中に多様な機能を効率的に収めるため、用途構成および動線計画を整理している。

1Fロビーでは、オンラインチェックイン、チェックアウトの導入によりフロントレス化を図り、レセプション機能を最小限に抑えることで、宿泊者同士が交流できるラウンジ空間として計画している。中央に据えたカウンターは、人の動きや視線が交差する場として機能し、自然なコミュニケーションを促す。ゲストに限らず街を歩く人も思わず立ち寄りたくなるような、カジュアルにアクセスできる開放感を大切にしている。この場所が新橋の新たな交流拠点となることを目指し、地域にちなんだ商品を展開する自販機を設置。また、新橋を知り尽くした街のプロフェッショナルがロビーに常駐し、地域の魅力を発信する取り組みを行っている。

客室フロアは、各階1部屋で構成され、3タイプの客室を計画した。都心部では希少なグループ・ファミリー向けの構成とし、すべての客室で5名以上での利用を可能としている。限られた空間の中で収容人数を確保しつつ、快適性を両立するため、バンクベッドを採用し、収容性を確保すると同時に、視覚的なアクセントの要素として位置付けた。さらに、長期滞在に対応するアパートメントホテルとして、全室にキッチンおよびドラム式洗濯乾燥機を備えている。

本計画は、オフィス用途の建物をそのまま活用したコンバージョンホテル。既存構造を再利用することで、建替えに伴うCO2排出量や建設廃棄物を大幅に削減し、新築と比較して工期の短縮も実現した。環境負荷の低減と事業性の両立を図る、ESG投資の観点からもサステナブルな開発としている。

内装は、キーカラーを効果的に取り入れながらも過度に主張しないバランスとし、コンパクトな空間においても落ち着きのある滞在環境となるよう配慮した。

機能性と多様な滞在ニーズに応える居住性、そして街との緩やかな接点を設けることで、新たな滞在体験と交流の場を生み出した。

2F GUEST ROOM

3F・4F GUEST ROOM

5F - 12F GUEST ROOM

Project details