Interior design
Hamamatsucho PREX
JR山手線・京浜東北線の浜松町駅から徒歩5分のオフィスビル「浜松町PREX」。
ビルの1Fには、来客者との打ち合わせや休憩など、入居者が多用途に利用できる共用ラウンジ、屋上には開放的なテラスも完備されている。
1日を通して働く時間を快適にする新築のオフィスビルである。
今回求められたのは、ビルの完成と同時に公開するセットアップオフィスの計画。セットアップオフィスとは、すでに内装や家具が整えられた状態で貸し出されるオフィス物件のこと。
新築のオフィスビル全フロアの内装を、貸主が決定する前にデザインする形式のプロジェクトであった。
働き方の自由度を高めるオフィス空間
今回完成した3つのバリエーションのオフィス。
設計の課題は、空間の奥行き約7m、全体の総ワイドが約24mという、奥行きが短く横に長い区画であったこと。EVを降りてから見渡すことのできる視点の先に、オフィスにおいて必要となる複数の機能・要素を重ねるための空間の余裕が少ない。
複数の機能とは、たとえば企業のロゴを配置する壁面、待合スペースや打ち合わせスペース、オフィスへの導線となる通路などであるが、エントランス空間で構成できる要素が少ない場合、空間にインパクトを持たせにくい。
加えて今回の区画では、3方向に拡がる窓面に沿い、床から400mmの高さのペリカウンターがぐるりと設置されていた。それにより、窓に面する部分の設計に制約が生じた。
そのような条件のなか、3パターンのオフィスをデザインした。
常々、その区画と要望に対してのベストなプランを提案したいと考えている。ただ、今回はそうではない。これだな、と納得したプランを別の視点から否定し、次のプランを組み立てていく。そうした工程で新しいプランを考える作業には、新鮮さも感じた。
完成したオフィスは、空間の使い方、導線もそれぞれ異なる。他のレイアウトの長所と短所を補う形で各プランを計画していることから、3パターンで1つのオフィスデザインが完成したと考えている。
PLAN A OFFICE Layout
一つ目は、フロアの中央に配置した大きなワークテーブルが特徴の【PLAN-A】のタイプ。エントランス・来客スペースからワークスペースが自然とつながるラウンジ型オフィスである。
エントランスから直結する来客用エリアに会議室を2つ配置しながら、EVを降りた瞬間に、ラウンジ、会議室、そしてガラス越しに見える外の景色へと複数の要素が一体感を持った階層として視覚的に繋がる。訪れた人に空間のインパクトと奥行き感を印象づけ、オフィスの広さが感じられ、開放的な印象を与える。天井の一部をスケルトンにし、高さを出すことも開放感を感じる要素の一つである。
オフィス内は、広々とした大空間。中央のワークテーブルを囲むように窓際にはソファ席をレイアウトした。ペリカウンターを利用したソファ席は、利用シーンを想像し、L型に造作家具を加えた。カフェで過ごすようなリラックスした空気感の中で、自然なコミュニケーションも発生しやすい。
また、オンラインミーティングや集中したい作業にはワークブース、気軽な立ち話やブレストにはハイカウンターを利用したりと、集中の深度や目的に合わせ、様々なスポットを自由に選んで過ごすことができる。


















PLAN B-1 OFFICE Layout
一方、【PLAN B-1/B-2】では、ワークスペースと来客者の導線・ラウンジが仕切られたオフィスを計画した。
EVを降り、通路を進むと奥にラウンジスペースが拡がる。来客用エリアには、クローズドな会議室が2部屋。Aのプランと同様に、ソファ席やスタンドミーティング、立ち話に利用できるハイカウンターも配置した。
Aプランと同様、仕事の内容や目的に合わせて働くスポットも選ぶことができる空間であるが、異なるのは空間を仕切る壁があること。エントランスとワークスペースを仕切る壁、オフィスとラウンジエリアを仕切る壁を設け、それぞれのスペースが程よい距離感を持つ。
課題となるのは、EVを出て目の前に見える景色が1枚の壁であること。空間のインパクトやインテリアの雰囲気など、企業の個性を訴求するための場所として、基本的にはエントランスの空間は広いほうがいいと考えている。
一方で、窓の外の景色やオフィスのインフラの位置を考慮し、少し強引ではあるが、壁に沿い、西側に誘導する形でパブリックスペースを配置した。
オフィスに入った瞬間のインパクトこそ少ないが、奥まったラウンジエリアでは、周りからの視線を遮断する。デスクとは離れた場所で気分を一新し、リラックスしながら過ごすことで仕事の効率化も期待できると感じた。
ラウンジエリアに配置したミーティングルームを透明なガラスで囲ったのは、通路を配置した分の圧迫感を感じさせないため。また、角をとることで空間に柔らかさを与える。さらに、ラウンジスペースへと自然に動きやすく、回遊性を高めることも意図している。
どこでも働くことができる今、オフィスのあり方は変化した。ただ働くための場所ではなく、人が集まり、コミュニケーションが生まれ、そこから刺激を受け、モチベーションに繋がる。細部のデザインを加える前、レイアウトの計画段階でも、多くの働き方・過ごし方が実現できると手応えがあった。
インテリアは、完成後にも自由にカスタマイズできる余白を残したシンプルな設えであるが、壁面に施したタペストリーやアート、クッションなどスタイリングで、空間の細部に彩りをプラスした。今後、この空間が、多くの人が集まることで活かされ、育っていくことを願う。















Project details
-
Location / Area
Tokyo, Minato-ku /
延床面積 / 2,503.05㎡ 、各フロア面積 / 230.91㎡
-
Date of Completion
2023.05
-
Client
浜松町PREX 公式サイト
-
Design
I I L S Inc.
-
Design / Construction
-
Photographer
Yoko Okada